コリドー街にあらわれた女性、亜梨沙。
いまをときめく女性ファッションのエディターだ。
年は24。
関西の有名私大を卒業し、東京の出版社に就職して1年。
ようやく仕事にも東京にも慣れだした。
雑誌名をいうと、「え、あの雑誌やってるの!?」と、羨望のまなざしで見られる。
顔はすましているが(小鼻はヒクついているかも?)、心の中は「私、やっぱりすごい!」と全力ガッツポーズ。
出身は関西の小さな港町。
おしゃれな店なんかひとつもなかった。
そんな町で心の癒やしにしていたのは、八頭身のモデルがきらびやかな服に身を包み、華やかさ満開のファッション誌だった。
「いつか東京に行って、ファッション誌の編集者になる!」
ひそかに抱いた夢。
それが念願かなって、いまじゃ表参道、恵比寿、青山を闊歩し、モデルやヘアメイク、フォトグラファーと仕事をする新米エディター。
雑誌は出版不況の最中、飛ぶ鳥落とす勢い・・・・・・とまではいかないものの、着実に売上を伸ばす好調ぶり。
まさに、人生上り調子、この世の春、天狗にならない理由なんて・・・・・・ないっっっっ!!!!!!
足りないものといえば、オトコ。
とはいえ、カレシはいる。
カレは、大学の同級生で、就職で東京に出てきたのも一緒。
外食チェーンに就職し、三鷹にあるファミレスで店長をしている。
クリエイティブな雰囲気が感じられず、カレシとしては物足りない。
そしていま、コリドー街にきている。
はじめは落ち着かなかったひとりご飯も、いまでは物怖じせず、食事を楽しめる。
これも大人になったってことかしら。
行きつけのバルで桃とオレンジのサングリアを飲んでいると、隣にいたスーツ姿の男性から声をかけられた。
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